unlearn

インド系の文学者歴史学者哲学者ガヤトリ・スピヴァクの言ったunlearnとは、学び直すと訳せるけれども、学校教育はいわば必要悪のようなもので、その目的は産業社会にふさわしい人間の製造にある。

 

ゆえにその教育を受けた者が産業社会の価値観や社会体制を批判しようとするなら、それまで受けた教育を、批判的に活用するために学び直さなければならない。unlearnするのだ。

 

それまで受けた教育を学び直すとは、今ある自己を改造すること、変身することでもある。今ある自己は徹底して産業社会にふさわしい自己として形成されているから、そのような自己の変身こそ哲学や文学や歴史を介してなされることになる。

 

いや歴史や文学や哲学が自己の変身、そして社会の変革に寄与しないなら、それらはそもそも何のためにあるのか? 自己が変身しないなら、そもそも何ために学ぶのか。何のために書を読むのか?

 

いかに自己を変えるか、所与の思考法とは別の仕方で思考すること。学校教育で訓練された思考法を批判的に使用するべく新たな思考法を見出すないし作り出さなければならない。

 

今ある自己に充足しないこと、ナルシシズムから遠く離れること。

 

unlearnは単なる自己の内なる知の組み替えではなく、自己の存在の仕方そのものの改変を意味するのだろう。